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Vol.2 本物のハワイをあなたにコアの木の物語

竣工時より高い人気を誇るモノリスタワー。最新のホテルなので当然といえば当然ですが、評価に違わない工夫が館内全体に施されています。この工夫こそが人気の理由と言えるでしょう。ハワイアンズはモノリスタワーを造るにあたって強い思いを込めました。それは、「本物の素材を使うこと」「ハワイの真の歴史を伝えること」「ハワイの文化を支える神話世界を感じてもらうこと」です。

本館をはじめ、従来の諸施設は、「ハワイの文化をわかりやすく伝える」ことを大切にしてきました。感覚的にわかりやすく親しみやすいということを前面に出した展開してきたのです。これに対し、モノリスタワーでは、「本物」をキーワードにしています。長くハワイアンズの歴史に親しまれた方たちにはさらなる魅力を、本場ハワイに出かけられた方たちには懐かしさを、そしてハワイの文化や自然に関心のある方たちにはより深い満足感を提供することを目指しました。

そのため、現地のアーティストや文化人とコンタクトを取り、主旨を説明して協力を仰ぎました。ロビーや通路、客室に飾られるさまざまな作品はもとより、見えない部分にまで多くの工夫を凝らしています。その積み重ねがモノリスタワーの魅力なのです。

今回はフロントでチェックインの際に渡されるルーム・キーについてお話しします。いえ、鍵ではなくストラップ代わりに用いられているウッドについてのお話です。

コアの物語

このウッドはコアという樹木から切り出されました。コアはハワイの伝統文化でとても大きな役割を果たしてきました。ハワイ諸島を見つけたポリネシアの人々はカヌーに乗り、太平洋上を何千キロも航海してたどり着きました。その途方もない旅路を支えたのがしっかりとした木材から造られたカヌーでした。しかし、到着したハワイに同じ木材はありませんでした。そこで森の奥深くに分け入り、苦労して探し当てたのがコアだったのです。

モノリスタワーでは火の女神ペレとレフアの花を中心に、古代から面々と受け継がれてきたハワイ独自の文化を表現しようと、さまざまな工夫を凝らしています。レフアの花はロビー内だけでなく、通路や客室の一部にも別の形で描かれています。次に訪れる機会がありましたらぜひ探してみてください。

コアはマメ科の植物で、日本のアカシアに近い仲間です。巨木になりますが、材はとても柔らかくて軽く、繊維質で油分を多く含みます。まさにカヌーにぴったりの素材だったのです。

しかし、あまりに多く伐採したことに加え、やがて導入した家畜などに幼木が食べられてしまったため、コアは絶滅の危機にひんしました。今では手厚く保護されていますが、まだまだ絶対数が少なく、倒木であっても許可なく持ち去ることは禁じられているほどです。

今日、コアはウクレレなどの工芸品に用いられます。評価が高いのは木目の魅力にあります。わずかに表面が波打っているため、光の当たりかたが変わると色を変えるのです。トラ目と呼ばれるこの特徴ゆえに、コアは高い人気があり、きわめて貴重な木材であり続けます。

モノリスタワーではこのコアをすべての客室キーのストラップとして用いました。コアを通じてかつてのハワイに思いを寄せ、広大な太平洋を航海した木であったことを思い出していただければ幸いです。

profile 近藤 純夫 近藤 純夫

エッセイスト、翻訳家、写真家。ハワイのスペシャリスト。モノリスのハワイに関するインテリアを担当。著書に『フラの花100』『ハワイアン・ガーデン』『ハワイ・ブック』(以上、平凡社)、『ハワイBOXフラの本』(講談社)、『歩きたくなるHawaii』(亜紀書房)など多数。ハワイ火山国立公園アドバイザリースタッフなど、現地でも活躍する。